あなたはうみにひそむ影だつた

轟くように おおきくなつていくあなた
おもいではかなしいもので 夜を冷やしていくばかり


わたしにとつては
このまつくらで おおきなものが
あたたかくて しかたがないんだなあ


のみこんだのは 鄙びた月光と 暗誦する詩の一節

かけおりていくような ピアノの旋律

ねむるように おいかけた あおくてしずかな 草木の匂い


あなたの笑い声








あおの淵源をめざせば
魂は 彷徨うことを忘れない
抽象も具体も 溶けてしまつた
みじかい旅路を くりかえすばかり







夕映に とりのこされたわたしは
鼻にぬけるような ことばたちを
空にのぼらせたくて
うえをむいて おおきく おおきく 呼吸する



うわついたような センチメンタリズム
ふざけたように つまさきをたてて
雨に濡れた土の匂い
なつかしい あさのひかり




あなたは うみにひそむ影

まつくらでおおきなもの