身に潜む魔物に
触らずにはいられないのだ

そうか
動かぬ水面に
手を触れ 波立てていたのは
自分だったのか













飽きれた男だよ
本当に


だんまりしていればいいのに
むやみにことばにするものだから






しかし
僕は
また触れてしまうであろう


"言葉によって己れを問うことはあっても、それを文字にすることのない敬虔な人は多くいるのである。"




不幸な衝迫
己れの言葉が文字となる
そのたびに自らを切り捨て、人の忌むところに火柱立てる





わたくしは
私というものは
この病に犯されながら
そこにある美しさを感じているのだと思う

生きる恐ろしさに直結する美意識
生ぬるい風のような絶望感
泥炭 よごれちまった 湿った傷口
砂を噛む口腔 灰色の味覚
無辺際に彷徨う魂

水面にまた愛撫する
冷たい慈しみ 夜の底でまどろんで


ぼくは悪い人間だ
だからどうしたっていうのだ

また心許なく 宛名のない手紙を読むわけだ