茫漠

衒いなく笑う


白皙を染める
赤く染める
滴り 醸し出す芳醇
星雲の香り 柑橘の苦み

あなたの手は透きとおる
血は真っ赤だ
赤も透きとおる
現し身は闇だ
闇も透明に

溷濁と流麗と
泥濘と滔々と

これでは燃えぬ
気化せぬ
灰にならぬ
頭蓋も肋もそのままだ
泥濘に埋まったままだ
掘り起こして何になろう


息は絶え絶えだ
梢の霜に襤褸がまとわる
おぼろな月は 静謐な死だ

瞼の裏に浮かばせた
ノスタルジアの鐘の音が
地平の霞に放たれた
愛はここから息衝いて
私の窓を開け放つ

ノスタルジアの鐘の音が
地平の霞に放たれた
愛はここから死に絶えて
私の窓を軋ませる